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松尾レミによる 「大人になったら」 セルフライナーノーツが公開されました。

 

 

この曲は2013年、私が大学3年生の時に産まれた。

地元のある友達は、大企業に就職内定したとのことで、ひたすら年収の自慢話、

東京のある友達は、絵本作家を目指したり、芸術家になりたいけれど親に反対されたりと、

みんながそれぞれ人生の岐路にいた。わたしは、音楽でやろうと決めていた。

 

ある夜、下北沢でライブがあり、終電も逃し始発待ちをしていた時のこと。

隣には同じく、ライブ帰りであろうギターを背負った汚いお兄さんが居た。

自分よりも相当年上だろうその汚いお兄さんの瞳の奥はとても美しく、

まわりの若者よりも希望に満ちあふれていた。この瞳を見た時に、

世間に揉まれても汚い社会を知っても歳を取っても、

好きなモノは好きで綺麗なものは綺麗と思える人でありたい、と思った。

 

「音楽なんてくだらない事やっても無駄だから辞めちまえ。どうせ叶わない夢なんだから。」と、私に言った奴が居る。

あいつはきっと、ステージから見えるお客さんの、心を剥き出しにした表情や、力む拳を見た事がない。

真面目に会社勤めをしているサラリーマンが、夜中はライブハウスで暴れていることなんて知らない。

そして絵本出版が決まった友達のことも、始発を待つあのお兄さんが実は有名なプロミュージシャンだという事も知らない。

それなのに、あたかもこの世の全てが解っている様な口を叩いた。わたしは悔しかった。

でも、絶対にあいつも昔は輝く瞳を持っていたはず。もしや、その輝きを、まだ心の中にそーっと隠し持っているかもしれない。

瞳が濁ったふりをしているのかもしれない。

そんな人たちがたくさんいると思うから、少しだけでもその輝きを取り戻せるような歌を、私は唄いたい。

 

大人になったら解ることって、何ですか?

大人になって見えなくなってしまったことって、ありますか?

大人になるってどういうことでしょうか?

 

私は、まだ解りません。

58歳のパパも、まだ解らないそうです。